不便という強さ

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蒜山に移住した理由はいくつかあって、中でも大きいのは「水」です。
ホームセンターでペットボトルの水を箱買いする暮らしに違和感があったし、震災と原発事故を通して改めて水の重要性を感じたりして。

せっかく移住するなら水のことは妥協したくないと思っていました。

冬期の積雪の多さから何人かの方に蒜山への移住はやめておいた方がいいとのアドバイスも頂きましたが、雪があってこその水の良さだと思っていたし、今でも冬はそう思いながら雪かきをしています。

雪のため強制的に農閑期となりその分収入は減るのですが、そこはゆっくり豊かな時間を味わう期間だとも捉えて。

その「水」以外にも

中国地方でも数少ない広い規模で畑作ができそうな環境。

パン屋タルマーリーの存在。

「なぜ自分は自然栽培をしたいのか」ということに立ち返ると彼らの存在は非常に大きいものでした。

そんな蒜山に移住してあと数ヶ月で丸3年になります。
農業においても暮らしにおいてももちろん不便な点はいくつもありますが、どんどんこの土地のことが好きになる自分がいます。
たまに地元の方から「こんなところじゃ…」的な話を聞きますが、逆に「ここだからこそ!」と思ったりもします。

 

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買い物に行くのに一番近い倉吉という街まで往復60km。
移動時間だけでも1時間かかり、ガソリン代だってかなりかかります。
もちろん冬の雪は想像以上に大変だし、寒さも厳しいので暖房代だって馬鹿になりません。

農業以外の仕事を探そうにも求人は少ないし、条件的にも都会の感覚から見たら信じられないような条件でしょう。

でもそんな不便なところだからこそ培われている「強さ」と「逞しさ」があって、
「美しさ」と「楽しさ」もしぜんとあって、そこに心を惹きつけるものがあります。
最近は1日中草刈りをする日が続いていますが、作業中ずっと考えごとをしています。
この草刈りだって平野部だったら5分の1か、下手したら10分の1くらいの時間と労力で足りるでしょう。
でもそれを単に負担と感じるだけでなくここがきれいになったら気持ちいいだろう、なんて思いながら作業できるのはこの土地が好きだからこそ。

 

人とも自然ともつながれる農業ってやっぱりいいですね。

 

 

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高谷裕治

 




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