大地の再生講座@蒜山 report2

今回の講座の目玉は、山に入って木を掘ってくどの敷地に植えること。

矢野さんはどういう木を選ぶのか。
どのように掘って、どうやって運ぶのか。
そして植える配置は。植え方は?

以前、他の場所での講座に参加した時に一緒に参加した造園家の方が、
矢野さんのやり方は造園の常識では考えられない、と笑いながら話していました。
なので、講座が始まる前から楽しみでドキドキしていました。

先に結論から書いてしまいますが、

すべては「水脈」に尽きる。

そんな当たり前のことをまじまじと見せつけられるような講座になりました。

 

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植栽の目的は景観だけではありません。
大地に張り巡らされている空気と水の脈、いわゆる水脈の機能の維持と強化を担ってくれるのが植物です。
地上と地下を繋いで空気と水を大地に送り込み、根を張ることで地形も安定させてくれます。

しかし、水脈自体が滞っていて大地が呼吸不全を起こしている状態では植物や他の生き物も呼吸ができず弱ってしまいます。

すなわち、水脈のための植栽であり、植栽のための水脈でもあります。

 

ということで、山に行く前にくどの水脈の整備から始まりました。
6月の講座の時にも同じ敷地内の水脈をつくりましたが、今回はそれを広げたり、新しい水脈を掘っていきました。

前回も参加された造園家の方が、もともとくどの敷地にあったネムの木がかなり元気になったと驚いていましたが、矢野さんも「前回掘った水脈はかなり効果が出ていて、今回の作業でさらに良い影響が出る」と話されていました。

水脈は1日にして成らず。
ただ一度に仕上げるのではなく、自然に問いかけるように手をかけて呼吸できる大地に戻していく。
命を扱うように自然と人間が一緒になって、慌てず、焦らず、ゆっくり急いで。

たとえ少しでも手をかけた分しっかり即座に反応してくれる。
講座が始まってすぐに、講座のことで頭が一杯だった自分でしたが、大事なことを気付かさせてもらえました。

 

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水脈の整備は結の作業によって驚くべき速さで進んでいきました。
自然や空気や水の力もすごいと思いますが、大地の再生講座に参加すると、この人と人の「結」の力に圧倒されます。
前もって細かな指示を出さなくても、自然と役割分担が決まって、皆で教えあって、助け合いながら進んでいく。
「結」の作業に参加すると、作業スピードだけでなく、なんというか心が満たされるように感じるのは自分だけでしょうか。
今の社会では孤立化、分断化が進んでいて、こういう結の作業をする機会というのはこの田舎でもあまりありません。

大地の再生講座は、矢野さんの考え方、技術的な所も学べますが、この結の作業も矢野さんが伝えたいことなんだと思います。

話がそれてしまいました。

水脈のつくり方は農地でも宅地でも変わりません。
今回も建物の近くや土が固いところなど土圧が高いところには溝を掘って、炭をかるく撒いてコルゲート管という穴の空いたパイプを入れます。
その上にパイプが潰れないように上や横からの圧力を分散させるための竹と細めの枝などを水が自然と運ぶように置いてあげます。

最後に、泥が入らないように泥濾しのために今回は稲わらを使いました。
溝の掘り方も、資材の入れ方も土のかけ方も直線的ではなく、水や風がするように流線的な動きになっていきます。

矢野さんは、重機で水脈を掘りながら土地のつまり具合を確認し、木を植える穴を水脈の近くに掘っていました。
おそらく人間でいうとツボにあたる場所に、まるで初めから決めていたかのように重機の動きが止まることなく、穴を掘っていました。

駐車場にあたるエリアは所々に点在するように、駐車場と反対側の客席の大きな窓がある側には少し多めに掘っていました。

小さな川に差し掛かる斜面にかけては、建物と川の水脈がつながるように、油圧ブレーカーという機械で凝りをほぐしながら木を植える穴をつくっていきました。

講座1日目の午前中の約3時間でおよそ600坪の水脈整備を大方終わらせ、午後はいよいよ森に移動しました。

 

つづく

 

 

高谷裕治

 

 

 

 

 




また逢う日まで
『小さな農民の会』
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