今年の亀の尾から思うこと

2019年10月22日

hiruzen0409_14写真・前崎成一さん

 

 

昨日同じ集落のおばあちゃんと立ち話をしました。

「私はやおく(柔らかく)炊かんとよう食わんけど、娘はかったい(硬い)米が好きでな、炊飯器を交互に炊いておるんよ」

そのお家ではお米の炊き上がりの硬さの好みが違いすぎて、お米をそれぞれ別々に炊いて食べているとのこと。

 

ほんとお米の好みって人それぞれですよね。

味や香りだけでなく、粘りの強さ、粒の大きさなどなど、人によって重要視するところは違います。
今日本で主食用に栽培されている品種が約300品種あるのも納得できますね。

 

でも、同じ品種でも作る地域が変われば違う印象になります。
同じ地域でも田んぼによっても変化するし、栽培方法にだって大きく作用されます。
その年の気候ももちろん受けるし、さらに言えば新米と熟成させたお米でも違ってきます。

なんか深く追い求めると抜け出させなってしまいそう。。。

 

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さて、前置きが長くなくなってしまいましたが今年の新米について書いてみようと思います。

今日は亀の尾について。

亀の尾は新規就農した時から栽培しています。
秋田の大潟村の先輩農家さんから「亀の尾4号」として譲って頂いたもの。一年目に収穫したお米を送ったら、大潟村で作ったお米と食べた印象が全然違う!と驚かれたことをよく覚えています。

そんな亀の尾を蒜山でつくり始めて8年目。
今年は今までとちょっと違った印象のお米になりました。

今年の亀の尾は水を吸いにくい!!
そして粒が長い!!

というのが最初の印象。

去年産のお米の炊き方と同様に炊いてみたら新米特有の瑞瑞しさが少ない。
新米は水分量が多いので少し水加減を少なくして炊くのが普通ですが、通常通りの水加減でも浸水時間を長くしないとちょっとパサパサとした感じになってしまいます。

オーガニックベースの奥津典子さんが去年話されていたことを思い出しました。

「ここ数年お米が水を吸いにくくなっている。気候変動の影響で、自衛のためなのかわからないけれど、、、」

そんな話だったと思います。

今年の亀の尾を食べた時にこの話を真っ先に思い出したのでした。
ササニシキに関しても新米にしては水を必要とする印象でした。いつも通りの炊き加減でちょうどよく、今までの新米のほわっとした印象に比べると、粒がしっかりしています。

 

謎です。

気候変動の影響で暑さから身を守るために外側が硬くなっているのか。
秋の気温が高くなり、成熟した時に秋の長雨と気温の高さから間違って発芽しないように水を吸わないようにしているのか。

考えてもはっきりした答えは出てきませんが、亀の尾は古い品種で現代的な品種改良がされていないので、環境対応性は新しい品種よりも高いのではないかと思っていて、今の気候に顕著に反応したのではないかと思っています。

これからの地球のことを少しネガティブに考えた時に、品種改良が進みすぎて遺伝情報が画一化した作物は環境変動に対応しきれず育ちにくくなる可能性が浮かんできます。

それを思うとこの亀の尾のような生育のバラツキや品質の変化のし易さというのは生き残りのための強さとも言えると思います。

 

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先行きの不透明なこの時代に自然から学ぶというのはこういうことなのかもしれません。
もちろん今年の亀の尾もとても美味しいと思います。
今で以上に長粒になって、味の濃さや香りがさらに力強くなったと思います。
あるお客様に「米をおかずに米を食う」と亀の尾を評してもらったことがありますが、今年はまさにそんなお米になりまりました。

 

欲を言えば、少し熟成させてから食べたい!
個人的にはどのお米も新米の時よりも最低でも年明けくらいからの方が落ち着いて美味しくなると思っています。ワインもお米もビールも出来たてよりも寝かせた方が美味しくなるものがありますよね。
自然栽培のお米はまさにその傾向があり、今年の亀の尾は熟成向きだと直感しました。
貯蔵性が高いというのもこれからの時代大切なことです。

でも悲しいことに、亀の尾もおかげさまで在庫が残り僅かとなってしまいました。(ネットショップはこちら→

米農家としてできることならば多くの方に一年を通して食べて頂きたい!と強く望むところですが力不足でまだまだ絶対量が足りません。

もっとお米の作付けを増やしたい気持ちもありますが、体力的な問題と他の作物との兼ね合いもあり正直難しいところです。
これを解決するには農家仲間を増やすことです。

 

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去年、蒜山耕藝で研修をした近藤くんが「」(こくものと読みます)という屋号で米農家としてデビューしました。
蒜山耕藝がずっと管理していたここ中和エリアでも一番標高が高く、最上流の水と景色が綺麗な田んぼを引き継いでくれました。
先日ササニシキの新米を持ってきてくれましたが、同じ種なのにうちのササニシキとも違ったとっても美味しいお米になっていました。ほんとお米って奥が深いです。

」ではまだ在庫があるみたいなのでササニシキをお求めの方はぜひこちらも覗いてみてくださいね。

 

 

高谷裕治

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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