「亀治」を知っていますか?
「亀治」と聞いてピンと来る方いるでしょうか。
米に詳しい人ならあの幻の米と言われる「亀の尾」の生みの親である明治時代の山形県の篤農家である阿部亀治氏を思い浮かべるかべるかもしれません。
でも「亀治」という品種を知っている人はかなり少ないんじゃないでしょうか?
亀の尾が生まれた1893年よりも20年ほど前の1870年位に島根県安来市の広田亀治氏が発見し育てた稲、それが「亀治」という品種です。阿部亀治と広田亀治、どちらも亀治という名前。なんかすごいですよねー。
広田亀治氏は不作に苦しみながら年貢を納める苦しい農民を救うために、地力が乏しくても収量が多く病虫害の害が少ない品種を生み出したと言われます。
私たち蒜山耕藝も縁あって亀の尾と亀治の両方を育てています。
同じ亀治さんが生んだ稲であってもその姿形は全く違います。亀の尾は儚くしなやかな稲姿ですが、亀治は豪快な稲姿。穂が出る出穂といわれる時期も収穫の時期も全然違います。
もちろん食味だって違います。
亀治は玄米や白米にした時に見た目は良くないけれど、食べてみると独特な香り、米粒の外側はさっぱりなのに中は割ともっちり。「あなた、見た目はドライな印象なのに話してみると結構情感たっぷりなのね」という感じ。
その亀治。
この低温と日照不足の中でもすこぶる生育がいいです。
種子法廃止や種苗法改正ということが話題となり新品種や育種ということが注目されましたが、亀治や金時糯、亀の尾のような先人たちが残してくれた古い品種の中にも気候変動に強かったり十分美味しいものがあるということも忘れてはいけないと思うのです。
自分は新しいものを生み出すよりも先人たちが残してくれたものを見直すということが向いているし、そこから学ぶことが多いと思っているのでどんどんニッチな方向に進んでいきます!
高谷裕治