自然栽培の育苗土
鳥取県の自然栽培ごま農家「胡麻のアトリエ」の丸瀬君のところで蒜山耕藝の研修生ミッキーとようこさんが、ごまの収穫研修をさせていただいたときに丸瀬君からお土産でいただいた”ずいき”。
さっそく皮を剥いて”干しずいき”にします。
冬は積雪で畑から野菜が取れなくなる蒜山では、もう、冬に備えて保存食を蓄えはじめています。
干しずいきから取った出汁はとても美味しいので、丸瀬君の自然栽培ずいきがどんな味になるのか、本当に楽しみです。
先日、玉ねぎの種をまきました。普通の栽培では、畑に苗床を作って、そこに種をまいて、苗をつくります。
その中からよくできた苗を抜き取って、別の場所に定植します。
私たちも昨年まではそうしていたのですが、畑の土がまだまだ荒くて、雨が降ると、硬く締まってカチカチになってしまう状態で、
しっかりした苗を作ることができませんでした。
自然栽培でめざす土は
「やわらかくて、あたたかい」
そして適度に水分を保てるような団粒構造をもった土です。
私たちの畑の土はそれには程遠い状態です。そこで夏野菜の育苗の時のように、畑の作物の残渣(収穫後の枯れた葉や茎)を集めて、何度も切り返して作った堆肥を使って育苗することにしました。
夏野菜の育苗の時には話題にしませんでしたが、私たちは、野菜の育苗の時には野菜の作物残渣を集めて作った堆肥を使う場合があります。
もちろん、畑に直接種まきして、それで育てるのが理想なのですが、畑の土の状態、管理作業上の都合など、いろいろな理由で堆肥をつかって育苗をしています。
あくまで、やわらかくて、あたたかい状態を求めてのことなので、窒素分など肥料的な効果を求める意味で使っていません。ですので、成分分析などもしませんし、米ぬかや菌類を入れて人為的に発酵させたりもしません。
森の土は、森の木の葉や倒木などが分解されて腐葉土になって作られています。野原は野草が枯れて、同じように土になっていきます。植物は自らの体をつかって、自らの子孫が育ちやすい環境をつくっています。
野菜も植物です。ですので、自然栽培では野菜を育苗するための土は、野菜など、畑で育ったものの残渣でつくります。それが野菜の苗にとって一番育ちやすい土だとされています。
私たちの師匠はそのことを「赤ん坊は親に抱かれると安心するだろう。それと同じなんじゃないのか?」と言っていました。
さらに言えば、稲わらさえ野菜には使いません。田んぼと畑では、土が全く違うからです。田んぼの作物である稲では、畑の作物である野菜に適した土はできないのです。
生物は自らの子孫の繁栄を願って、種を残し、そして、その種が育ちやすい環境を作ってきました。
それは、植物であっても、動物であっても、人間であっても同じではないでしょうか。
植物は、自らの茎や葉、根っこで子孫が育ちやすい土を、何億年もかけて作りあげてきました。
そこには子供たちに対する無条件の愛を感じずにはいられません。
地球上で最も進化したとされる私たち人類ですが、生きものとして、最低限のことさえ満足にできているのか?
玉ねぎの種から芽がでてきました。
物言わぬ植物たちに教えられる毎日です。
桑原広樹