いぶりがっこ

先日、秋田県横手市山内(さんない)に行ってきました。

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とあるご縁から、いぶりがっこをつくってみないか?と、お誘いを受け岡山県から、遠く東北の地へ行ってまいりました。

うかがった時は、もう紅葉の盛りは過ぎているとのことでしたが、西日本にはない鮮やかな山々が迎えてくれました。横手市は秋田県の東部に位置し、岩手県と県境を接する内陸部にあります。その中でも山内(さんない)地区は特に山がちの地形で、積雪が3mを越えることもあり、豊かな水に恵まれた土地です。ちょうど私たち蒜山耕藝がある地域と同じような土地の匂いを感じました。

 

三内地区は、冬を迎えるこの時期に、農家が今でも、昔ながらの製法でいぶりがっこを作っている唯一の場所といわれており、約100件の農家が、いぶりがっこを作っているとのことです。

 

ご存知の方は多いと思いますが、いぶりがっことは、いぶした大根を米ぬかや塩で、たくあん漬けにしたもので、くんせいのような独特の風味のたくあんです。全国で流通しているいぶりがっこは、工場で大量生産されているもので、三内地区で作られたものは、地元の直売所か、東京の高級スーパーで、しかも年明けから初夏までしか流通していません。私も、山内のものは、食べたことがないのですが、「これが本当のいぶりがっこだったのか!」というほど、大変おいしいものだそうです。(初夏までしか在庫がないので、今は食べることができないのです)

 

今回、ご指導をいただいたのが、いぶりがっこ生産者の会、会長の高橋さんとメンバーの佐藤さんのお二人です。

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こちらが高橋さん。

東北人特有の温かいお人柄と、秋田弁で迎えていただきました。いぶりがっこ製造中の繁忙期のなか、お仕事をお休みにして、詳しく教えていただきました。本当にありがとうございました。

まずは、いぶし小屋の見学です。

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小屋から煙がもうもうと立ち込め、知らない人が見たら「火事か?!」と思うほどの煙です。

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畑の収穫から大根洗い、いぶす工程、漬け込む工程、一通りの作業を体験させていただきました。これでなんとか、試作はできそうです。

私たちのお店「くど」の開店準備に追われるこの時期に、今回の視察のお誘いを受けたのには理由があります。

蒜山は大根が名産ということもありますし、比較的つくりやすく、冬の野菜として重要な大根はたくさん栽培したいと思っています。そして、畑に入れないほど雪が積もった時の食べ物として、たくあん漬けを作りたいと思ってきました。

ここ何年か、たくあん漬けに挑戦してきたのですが、いろいろな課題にぶつかって、今年はどうしようか悩んでいたところで、いぶりがっこのお誘いだったのです。

たくあん漬けは、通常、2週間ほど、天日干しをするのですが、蒜山は、この時期、にわか雨が非常に多く、雨が降るたびに屋内に取り込まなくてはなりません。また、晴れた日の朝は気温が氷点下に下がることも珍しくなく、大根が凍ってしまいます。自家用程度の量であれば、晴れた日中に外に出して、夕方にしまい込めばいいのでしょうが、販売できるような量でそれをやることは不可能です。

いぶりがっこであれば、天候に関係なく屋内で、しかも数日で乾燥させることができます。日本海側の雨がちな気候に見事に適応し、そして、普通のたくあんにはない独特の風味。先人の知恵には感服してしまいます。これこそ、蒜山耕藝がやりたいと思っている加工品の姿ではないかと思いました。

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4昼夜、薪火を絶やすことなく、燻された大根は、旨みがギュッと凝縮されています。それを米ぬかと塩で漬け込み、極寒の中、2か月間じっくり醗酵させます。想像するだけで、口の中によだれがでてきます。

来週から、試作に入ります。

蒜山耕藝の主力品になりそうな予感がしています。とても楽しみです。

桑原広樹

 




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