自然順応!

明日の土壁ワークショップに向けて、土壁を塗るための足場を組んで・・・。外壁を剥して・・・。
最終準備に入っている蒜山耕藝です。

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一週間前、人参の種まきをしました。千葉から種をもってきて、2年前に自家採種した種です。

今、種をまいて、収穫できるのは11月中旬からです。4月の雪解けまで収穫をします。じっくり生長した蒜山耕藝の人参は、力強さとともに、みずみずしく透明感があるとの評価をいただいています。

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人力の播種機で地道に種をまいていきます。種まきをする畑にしては、草が目立ちます。

梅雨の時期、トラクターで畑に入るタイミングが難しく、今年はあまり良い圃場状況での播種とはなりませんでした。草に泣かされる今年の人参栽培となりそうです。

 

毎年、この時期、人参の播種についてのブログを書いています。今年も、同じ内容になると思います。「またか!」とお思いになる長いお付き合いの方もいらっしゃると思います。が、書きます。

 

私にとって、毎年、毎年、初心を思い起こしてくれる貴重な経験なのです。

 

自然栽培において、播種のタイミングというのは、本当に重要です。

 

特に根菜は、自然栽培においては、生長の過程で、人間が関与することがほとんどできませんので、どのような状態で発芽させるかで、成否が分かれてしまうといっても過言ではありません。人参はその中でも発芽を揃えることが難しいといわれている野菜で、一般の栽培を行う人参農家であっても、播種は最も神経を使う作業です。

 

一年のうちで、播種に適した日は、ほんの数日しかありません。

 

後から考えますと、蒜山では今年は、私が播種をした日と、その翌日の午前しか播種に適したタイミングはありませんでした。午後には雨が降り始めてしまったのです。今年は最適な播種期間は1日半しかありませんでした。それくらいシビアなのです。

 

蒜山の気候では自然栽培で人参を作るには、7月10日前後が最適だと私は思っています。(もちろん太陽太陰暦も考慮にいれますので多少前後します。)

 

それよりも早いと、高温障害で人参が、病気になりやすく、また、遅いと十分に生長する前に寒波がやってきてしまうのです。自然栽培においては1週間のズレが、何割もの収量の違いになったり、味が乗らなくなったり、最悪の場合には病気や虫で全滅したりすることもあります。

 

梅雨の時期に播種ができるような適度に湿った状態というのは、実はあまりないのです。雨が降らない状態が2,3日続かないと土が乾かないですし、逆に梅雨が明けてしまって夏晴れが続くと、乾燥しすぎてしまって人参が発芽しません。本当に人参の播種は神経を使います。

 

ですので、この時期は、遠出をする予定や人と会う約束は入れません。天候に合わせた農作業が最優先のスケジュールとなります。自然に自分の行動を合わせるのです。自然のリズムに生活を合わせる。私たちの師匠はそれを「自然順応」と教えてくれました。

 

天候に自分の生活を合わせる。

 

「なんて面倒な!」とお思いになる方もいるかと思いますが、それはとても短期的な視点なのです。自然のリズムに合わせた栽培をすることで、農薬や肥料に頼らずに立派な人参ができるのです。

 

人間の都合で自然のリズムから外れた行動をとることで、人参が病気になったり、育たなかったり。そのために、たくさんの肥料や農薬をまかなくてはいけなくなるのです。肥料や農薬の購入代金、散布する作業時間、機械の燃料代、そして、環境への負荷や人体への影響ももちろんあります。

 

目先の人間の都合を追いかけてしまったために、後から多大な労力と経費と苦しみが生まれてしまいます。

 

逆に、自然と調和がとれた生き方、生活のリズムを意識することで、しなくても良い苦労が次第に無くなってくるのです。水は高いところから低いところへ自然と流れるように、自然に沿った行動、生活をすることで、ものごとがどんどん良い状況になっていくのです。

 

自分のエゴや目先の欲望で行動してしまうと、川の流れに逆らって歩くようなもので、一生懸命もがいても、進むのは容易ではありません。

 

それは、農業のことだけではなくて、人間関係や、ビジネスの世界など、生き方全般に通じるのではないかと思います。
一生懸命やっているのに、なにか物事がうまく行かないときがあったら、やろうとしていることに無理はないのか?自然の摂理、流れ、道理にかなっているのか?改めてふりかえってみたらいかがでしょうか。

 

「自然順応」

 

いつも人参の種まきのころになると、師匠のはにかんだ笑顔とともに思い出す言葉です。

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桑原広樹

 

 

 




梅雨そらの畑
「つつむ」
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雪の下の私たち。