消えゆくガマに僕らができることはあるか?

2023.5.16(小さな農民の会メールより)

 

 

こんばんは。
ゆうじです。

昨日までの3日間。
3回目となる「蒜山かご展」を開催し、今年も盛況のうちに終了しました。

600年以上も続く蒜山のがま細工。
実を言うとかなり危機的な状況にあります。

作り手の後継者不足ということもありますが、一番の問題点は原料となる「ガマ」が少なくなっていることにあります。

がま細工は元々自生しているヒメガマというガマと、シナノキという木の樹皮で作られるのですが、特に自生しているヒメガマがほぼ無い状況になっています。

そのため、蒜山がま細工生産振興会の方々はここ数年田んぼでヒメガマを栽培をしているのですが中々うまくいきません。

健康に生育したヒメガマでないと、長さが足りなかったり、コシが無かったり、色が悪かったりして良い製品をつくることができません。

特に大きめのカゴを作る時はある程度の長さが無いと作れないため、最近は大きいサイズのものが本当に希少となっています。
良い材料が無ければ後継者がいたとしても技術の伝承ができなくなります。

ヒメガマが育たなくなっている原因は何でしょうか?

よく気候変動のせいにされますが僕はそうは思いません。
ヒメガマは寒冷地のみで育つものではなく、暖かい場所でも生息しています。蒜山の気温は高くなっているとしてもそれだけで消えるとは言えないはずです。

僕は原因を土中環境の変化だと思っています。

湿地の状態が変わってしまった。それも悪い方向に。

水が浅く溜まっていたり、土壌が水分で飽和している土地のことを湿地と言いますが、一見溜まっているように見える水も緩やかに動いているはずです。

土の中を縦方向、横方向、時には波打つように、または渦を巻くように、ゆっくりだけどダイナミックに動いてると想像できます。

それが近現代の開発により、湿地の水の動きが変わりました。護岸工事や道路工事により、水は出口を失い、土中に停滞するようになる。じわじわとそれが斜面に伝わり、徐々に植生が変わってしまったのではないか。

これが僕の仮説です。

蒜山がま細工生産振興会の方も専門家や有識者の所に相談に行ったようですが、特に参考になる話は聞けなかったようですし、もちろん僕の仮説のような考えも一切なかったようです。

万が一、僕の仮説が正しかったとしても、それを改善できるかというのはまた別の話です。

かろうじて自生しているところの水脈を整えることで変化を生じさせることはできるかもしれませんが、土地の所有者の理解も必要ですし、関わる人全員が同じ問題意識を持っている必要もあります。

そして僕自身も農作業のある中そこにたくさんの時間をかけることができないし、勇気と覚悟もありません。

とはいえ、このままで良いのかという葛藤もあります。

蒜山かご展というのは、こういった課題に対してのアクションです。根本課題はすぐに解決できるものではありませんが、かご展を通して人の縁が生まれ、日常の道具として多くの人に使ってもらうこと。
そしてひとりでも多くの方に現実を知ってもらうこと。
この積み重ねを大切にしよう、という思いを持って参加させて頂いています。

原料が不足していることは蒜山の伝統工芸に限った話ではありません。
竹もカヤも山葡萄もほとんどの自然素材が減少しているか、質が変わって来ています。

伝統工芸は健全な自然環境があるという前提のもとに成り立ってきた、ということを今回改めて学びました。

農民の会の皆様の中には伝統工芸などに興味のある方もいらっしゃると思いましたので、今僕たちが見えている状況をシェアしました。

途方もない問題のようにも思えますが、希望を捨てず、小さな一歩からでも関わり続けていきたいと思います。

 




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