新米によせて。シーズン2のはじまり

2024年10月16日

 

亀治の稲刈りの2日後、ゆっくり乾燥してカラッと乾いたので最後の籾摺りをしました。

これで本当に稲刈り関連の作業は終わり、あとは来年に向けて田んぼの耕耘を進めるのみとなりました。
でも天気が良くないので停滞中。
貴重な晴れの日を麦の播種に使うか、田んぼの耕耘に使うかを悩む日々となりそうです。

 

今年の米づくりについては小さな農民の会のお便りで書いてきましたが、改めてこちらのHPでも振り返りをしたいと思います。
今年は13年目の米作りとなりましたが、これまで以上に自分の中での「新たな米づくり」にチャレンジしました。
ドラマやアニメは12回で1シーズンが終わり新たな展開がされていくように、13年目の今年は「シーズン2」の始まりの年です。

 

シーズン1は汗と涙が滲む、ガムシャラに突き進んでいくものでした。
なんとしても自然栽培で米を作り続けるんだ!と、時間と体力が尽きるまでやり通しました。
除草もやればやるほど良い、という考えのもとに毎日除草機を押し続ける日々。雨の日も風の日も、吐く息が白くなるほど冷え込む日も除草機を押し続けました。
おかげで体の筋肉は体を動かすためのエネルギーとして消費され、会う人会う人に心配されるほど体が細くなっていきました。

育苗技術、機械操作など農業の基礎的な力をついてきたことあり、就農当初に比べたらシーズン1の終わりには収量は倍近くなりました。

 

 

 

寒冷地での自然栽培での米づくりもなんとか形になってきた!と自然と自分を信じてここまでやってきたことが報われた気がして嬉しいと思う反面、自分の中に疑問も湧いてきました。

それは、

・このやり方でこの先何年できるのか?
・他の人がこのやり方でやりたいと思うのか?

ということです。

就農当初は30代半ばでしたが、気がつけば40代も半ばを過ぎ。
今はまだ気力も体力もありますが、数年後にガクッと体力が落ちる可能性もあります。また、怪我や病気などのリスクもあり、ハードな作業はそのリスクを高めるものでもあります。

 

多くの方に自然栽培に取り組んでもらいたいと思っているので、今のままではダメだと思っていました。
「自然と調和すると人も楽になる」という自然栽培の世界観こそ自分がこの世界に飛び込んだ理由なので、「楽」というのは非常に重要なものだと思っています。

 

 

 

2024年に入って今年のテーマを考えた時に浮かんだひとつめは「楽」。

どうしたら楽に楽しくできるか。
シーズン1は自然栽培の米作りの実現に向けた汗と涙の物語となったので、かなり大きい方針転換です。

ただ、これは自分にとって未知の世界。
自然栽培を信じているけど、ほんとに実現可能なのか。

 

もし大失敗して大減収となったらどうしよう?
融資の返済は?日々の暮らしは?
現実的な恐怖が襲いかかってきます。
今まではそれを打ち消すためにガムシャラにやってきたのかもしれません。

それで色々と考えて、シーズン1でやり切れなかったことをシーズン2ではやろうと思いました。

 

もうひとつのテーマは「信じる」ことです。

 

今までよりも、もっと心の底から自然の力、土の力、稲の力を信じてみようと思いました。

研修中に教わった自然栽培の原理原則の一つ「想いが先で、現実は後についてくる」。
頭ではそのことを覚えていましたが、それを徹底してやっているとは言えないものでした。

 

また、農業界の有名な言葉も僕の米づくりのスタンスに影響していました。
それは、「上農は草を見ずして草をとり、中農は草を見て草をとり、下農は草を見て草をとらず」という諺のようなものです。

いつの間にか上農家、篤農家になることが目的になっていて、先手先手を行くスタイルになっていました。草の芽を潰すことが土や稲の可能性の芽も潰していたかもしれない。

そして、今年は徹底的に信じること、自分の内面が現実にどのように影響するかを試す一年としました。

 

その後、3月に参加した稲作勉強会では無除草にトライして結果を出している事例と出会い、現実的な栽培技術として無除草を取り入れることにしました。無除草は今までの自分にとっては夢のまた夢の考えでしたが、信じることがテーマとなっていたのですんなり受け入れることが出来ました。

 

そうして始まった今年の米づくり。
すべての田んぼで無除草を実現できたわけではありませんが、去年よりも9割以上の作業時間を減らすことが出来ました。まったく除草に入らなかったところも数枚ありました。そこは去年まで草の勢いが凄く諦めた田んぼであったにも関わらず、ほとんど草が生えませんでした。

そして、ほとんどの田んぼで去年よりも増収でした。とはいえ一昨年の収量と同じレベルだったのでまだまだ課題はあります。

今は慣行栽培の7割くらいの収量ですが8割を目指したいですし、無除草を実現するために代掻きに多くの時間と燃料を使っています。
まだまだ持続可能な農法だなんて言えませんが、持続可能の営農と多くの人が取り組みやすい栽培技術の発展の糸口が見えたように思っています。

 

13年目の米づくりは自分にとって収量以上の大きな収穫と手応えを得ることが出来ました。
その中で一番大きなこととは信じることと、自分の殻を破る勇気です。

理想の自分、理想の暮らし、理想の社会はすぐには実現出来ないものですが、中々そこに近づけないのは無意識に自分に制限をかけているからかもしれません。

 

自然栽培の魅力は、自然に学び、自然に問いかければ、現実としてレスポンスを頂けることだと思っています。
今年の米づくりを通して、このことをさらに強く実感しております。

これを今年大苦戦の野菜や大豆など、他のことにも活かし、田畑の現場の変化を皆さんと共有することで自分も含めて皆さんの心の糧となるように自然を信じていこうと思います。

 

高谷裕治

 

 




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