やっとスタート地点に立ったのか

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5年目の米づくりもいよいよ最終ステージに突入しました。

農道から風に揺れる田んぼの穂を眺め、草刈りをしながら一つ一つの穂を横目で見ていると今年の米づくりの大体の結果と、今後の課題が自然と見えてきます。

穂が出る前はまだどうなるかわからないって希望的観測を持って稲を見ているのですがこの時期は現実を突きつけられます。
「自然界には偶然はない」と胸の中で呟きながら、今の現実を受け入れます。

さて、今年は15枚の田んぼで合計3町歩弱の面積でお米をつくってます。

5年目の田んぼが2枚
4年目の田んぼが5枚
3年目の田んぼが3枚
2年目の田んぼが4枚
1年目の田んぼが1枚

標高も一番高いところで540m位で、低い所だと450m。
高さも違えば土質も違う、地形や温度や日照条件すべてが違います。

こうやって改めて書き出しみると田んぼが一枚一枚条件が違うという当たり前のことがより鮮明になります。
車で10分も走るだけで標高が100mも違うというのは結構すごいことです。
思っている以上に稲の生育に影響があることでしょう。

それで今年の稲ということになるのですが、簡単に言うと例年並といったところ。
相変わらずの低空飛行。
実のところ、去年一昨年と天候は良くなったので心の隅で天気のせいにしているところもありました。今年も7月までは雨が多かったけれど「ひどい」という程でもなく、7月の後半から8月に至ってはこれ以上にない天気でした。

それでいての例年並の稲の姿なのでちょっと凹みました。

でも、だからこそわかったことがあります。
言い古された表現になりますが自分自身に原因があるんですね。

一つ一つの田んぼの違いを上っ面だけでしか見てなかった自分。
田んぼの成り立ちと今までに至った歴史を軽視していなかった自分。
田んぼの土を表層だけしか見ず、深いところまで掘り下げなかった自分。
田んぼが周辺環境とどう繋がっているか、その繋がりが阻害されていないか見てこなかった自分。
技術ばかりに気を取られ本質に向かう意識が薄れていた自分。
草に意識が向き除草ばかりに気を取られ、草の生える意味を考えて来なかった自分。
大切なのは稲が稲らしく生き生きと育つということを軽視していた自分。

これらを薄っぺらい次元でしか考えられておらず、行動として全くやりきっていなかった。
先日九州の先輩農家さんのところに行ってきましたが、彼らの取り組み方を見ると自分がいかに「してこなかった」かを教えてもらえました。

自然栽培は簡単に言ってしまえば無肥料・無農薬栽培。
でも肥料も農薬も使わないだけではできなく、同等、もしくはそれ以上に時間や労力をかけなくてはできないと思います。

自然栽培に「受容」的なイメージがあるのは僕だけでしょうか。
自分に与えられた状況の中で最善を尽くす。
それは間違いじゃないけれどその最善の中に積極的に自然に働きかける姿勢が自分には欠けていると思うのです。

今年の田んぼ。
5年目の田んぼは草もかなり生えている中、見るからに逞しく株を張っている。
違うエリアの4年目の田んぼは草も生えていないのに稲はとてもこじんまりとして、葉っぱの色も5年目に比べてかなり薄い。
残肥の残っている1年目の田んぼも5年目よりも数段おとなしく爽やかな稲になっている。

素晴らしい稲を育てている福岡の先輩農家の松本さんもおっしゃっていましたが、もう自然栽培歴が短いとか長いとかは関係ない。
大切なのは歴ではなく、どう関わってきたかということ。

5年間という短い時間ではあるけれど、いろんな条件の田んぼで米づくりをさせてもらってようやくスタート地点に立てたかもしれません。

この秋はこうしよう、来年はああしよう。
今考えていること、たくさんあります。
今まで絶対にやりたくなかったことや、自分の中では自然に沿っているのか疑問に思い避けていたことでもやってみようと思っています。とにかくやってみて、自然からこたえをもらいます。
移住した当初は米農家には絶対なりたくないと思ってたのに今の自分たちがあるのと同じパターン。
こういう時にこそ自分の中で新しい世界が広がるってもんです。

みんな生活に不安を感じながらも自然栽培に取り組み続けられるのはこういうことかもしれません。少なくても自分のエネルギーの源はここにあります。

 

高谷裕治

 

 

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