ウールの断熱材
私たちの食卓”くど”の工事も、仕上げの段階になってきました。
私たちの憧れであったのですが、でも、予算的な面で、どうしても実現できなかった、ウールを使った床下断熱。
一旦は、一般的な断熱材を使っていたのです。
そんななか、『環境と健康に負荷をかけない建築』『大自然に学び、そして調和する建築』をコンセプトに自然素材を活かしたやさしい家づくりを総合的に提案されている、横浜市の磯崎工務店の磯崎さんのご厚意により、くどの床の一部をウールの断熱にすることができました。
根太の間に隙間なく、ニュージーランド産のウールを敷き詰めていきます。フカフカで、あまりに気持ちよいので、敷き終わったあと、みんなで寝ころんでしまうくらいです。
冬はマイナス13度くらいまで下がることもある、ここ蒜山では、冬を快適に、また、暖房を効率的に行うには、断熱が非常に重要になっています。一般的な住宅では、発泡スチロールのような素材を使うか、グラスウールと呼ばれるガラス繊維を使います。
くどは、昔ながらの土壁ですので壁の断熱は自然素材で実現できたのですが、床の断熱は苦渋の決断で、ウレタンにしていました。それを今回、床の下地をはがして、ウールに敷き替えました。
日本古来の床は、畳で断熱していたのですが、くどの機能を考えると、畳にするわけにもいかないですし、本物の畳は、実は、非常に高価なのです。
今、一般的に使われている安価な畳はとても自然素材といえない代物で、畳表、芯材、ともに化学物質が使われたものになっています。
磯崎さん曰く、ウレタンの断熱材は、どんな基準を満たしたものでも、そもそもの原料が化学物質なので、どうしても揮発するものがあるそうですし、白アリの大好物なんだそうです。これを防ぐために、また、強力な薬剤が必要になってしまいます。
この断熱材の上に下地を張り、そして、厚さ40ミリの床板を敷いていきます。これで、床下の断熱は完璧です。
この部分は、あえて荒い仕上がりの板をつかって、素朴な感じにしています。柿渋を塗って完成です。
ウレタンを入れていた時と比べて、心なしか、空気感が変わった気がします。
くどもだいぶ、完成形がみえてきました。大工仕事がやれる日はとても楽しいです。
生活の基本として、よく「衣食住」といわれますが、口の中にいれる「食」、肌に直接、触れる「衣」に比べて、「住」はデザインや機能のこだわりはあるのでしょうが、安全性や、本来どうあるべきか、という観点が抜けがちになる傾向があるかと思います。
しかも、家づくりは予算的に非常に高価であることから、できるだけ安く、早く、という意識も、まだまだ根強いのかもしれません。
トータルの予算は決まっていて、作りたい家の大きさも決まっている。どうしても、そこに納めようという施主の要望を実現するための競争が、現代日本の化学物質まみれの住宅の原因ではないかと思います。
でも、一生に一度の買い物、そして、家族みんなが何十年と毎日暮らす空間です。子供たちがすくすく健やかに育つ家というのは?間取りや、デザインだけでなく、一つ一つの素材はどういうものなのか?「住」も「食」も「衣」大事にしたいですね。
桑原広樹