「藝」

hi06写真 / 前崎成一さん

 

早いもので蒜山耕藝が誕生して4年の月日が経とうとしています。

2011年8月、ここ蒜山の旧中和村に流れ着きゼロからスタートを切りました。
そして、たくさんの方に支えられて今に至っています。
毎日の仕事に追われるままになかなかブログを更新できずにいますが、改めて蒜山耕藝が大切にしていることを紹介したいと思います。

 

「蒜山耕藝」の「藝」という文字。

 

この一文字に蒜山耕藝のエッセンスが詰まっています。
私が尊敬して止まない故藤井平司氏はその著書の中で「藝」について書いていて、それを10年程前に読んでからずっと大切に胸に留めていたのです。

「藝」という字の成り立ちを甲骨文字や鐘鼎文字まで遡っていくと、人間がひざまづいて植物を植え付けている姿になっています。

つまり、植物を栽培すること。
人間の食べものである植物をつくる姿。
それは太古の昔から人間がいのちをつなげていくためにを絶え間なく続けてきたことです。

厳しい自然環境の中で自分たち人間のいのちを守るためには、食べ物である植物のいのちを守ることが必要だったのだと思います。
植物を手にひざまづいている姿に作物や自然への畏敬の念が表れているように思えます。

相手のいのちを尊重し、守ることによって、自分自身のいのちが守られる。
そこに「生かされている」という感覚が生まれてくると思うのです。

様々な情報が行き交い、多様な価値観が存在し、混沌としているこの時代において、
いのちの糧となる食べ物をつくる農家である自分たちが「藝」という文字に詰められているエッセンスを大切にしたかったのです。

その本質から外れないように生きていきたいと思い、農家としての屋号にどうしても「藝」という言葉を使いたかった。
その思いをデザイナーの前崎成一さんがそれこそしぜんに4文字にまとめて「蒜山耕藝」という名前が生まれました。
ほんとにいい名前を頂けたと思っています。

 

2012年6月のブログで自分はこう書いていました。

 

「自分達の暮らしを通して、
食べものをつくるという農業を通して、
美しく、調和した世界を目指していきたい
まだまだ力不足な自分達ですが目指しているのはそういう世界です。」

 

DSC01969写真 / 前崎成一さん

 

4年近く経った今でもその思いは変わっていません。
むしろ強くなっています。

社会情勢的には当時も大変な時期でしたが、現在はさらに混沌としている状況です。
それでも決して諦めたくないのです。
だからこそ蒜山耕藝としてこれからも食べものつくっていきたいと思います。

 

旧暦の新年を迎えた今、あらためてその思いを強くしました。

これからも私たち蒜山耕藝をどうぞよろしくお願いします。

 

 

高谷裕治

 

 

 

 

 

 




ケの食卓 2015年春 (と、くどのお知らせ。)
味の記憶。
1月のお知らせ、あれこれ。
藝の食卓、終わりました。