風のこと 1

2020年8月2日
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移住して緑に囲まれて暮らすようになって、風に対する意識が変わった。

 

東京に住んでいる時は特に風を意識することは無かった。
20代半ばに鎌倉に引越し、サーフィンを初めてから風に敏感になった。波は風によって起こされ、風向きによって波質が変わる。
良い波に乗りたい一心で風を見ていた。おかげで天気図が読めるようになり、それは今も活かされている。

 

蒜山に移り農業を初めてから風はもっと身近になった。風で木々の枝葉が揺れる音を聞いたり、草が靡く姿を通して風を見る。
それはとても心地が良いが、蒜山は強風が吹き荒れる日も多く、その度に翻弄させられている。
ナスやトマトなどが支柱ごと倒れたり、被覆資材が吹っ飛んだり、建物が壊されることもある。

 

そんななか、2015年に初めて矢野智徳さんに話を聞く機会を得た。
空気と水の働きについての話を聞き衝撃のあまり武者震いしたことを覚えている。

空気と水は地表だけでなく、大地の中でも脈を形成している。
地表の動きと連動するように大地の中に水だけでなく空気も動いている。
大地の中にも風が吹いていると言うのだ。
その二つの働きによって地形が形成され、生き物達が生息していく。
しかし現代ではその空気と水の機能が低下してまった。
山の木々は弱り、生き物達の数も減っている。
川の水は減少し、川底の石は茶色いぬめりを持つようになってしまった。
今できることは失われた空気と水の機能を取り戻すこと。
大地が呼吸できるように、大地の中に風が吹くように脈を繋げていく。まだ間に合う。やり続けるしかない、と。

 

風に対する興味がぐっと高まり、景色の見方が変わった。

 

 

高谷裕治

 

 

 

 

 

 

 




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