いぶりこうこ

2021年3月8日

 

 

「いぶりこうこ」は蒜山耕藝の加工品の中で最も難易度の高いものです。
なぜ難易度が高いのか。つくる工程をざっと説明してみましょう。

 

まずは大根の栽培です。

原料が無ければ始まりません。
当たり前のことなのですが、ある年には大根が虫によって全滅したこともあるのでここが一つ目の大きな壁となります。

また、意外かもしれませんが品種選定も重要です。
普通の青首大根だとうまく水分が抜けないので白首大根でないと難しいのです。
そして火を焚いて乾燥させた時に水分のムラが生じないように太さや形も重要です。

2.3年前に練馬大根など根っこの先の方が太い大根を作って成長も抜群だったのですが、結局うまく水分が抜けずほぼ全て廃棄になってしまいました。
練馬大根などは一本抜くだけでもほんとに大変で過去最高の辛さだったのにダメになってしまったので心が折れて、「もう2度とつくらない!」と誓ったほど。

 

 

良い大根が穫れた後も手間がかかります。
ここから先の製造は同じ中和地区に暮らす「一般社団法人アシタカ」の赤木さんにお願いしています。

まずは洗ってから小屋の中にぶら下げます。下で火を焚いて三日三晩柔らかくなるまで水分を抜きます。
もちろん夜中も頻繁に薪を追加したりするので過酷です。
水分がなかなか抜けないと失敗のリスクが高まります。これが二つ目の大きな壁。
無事に水分が抜けたら再び水洗いして漬け込みです。
地域や人によって材料は違いますが、蒜山耕藝は自分のところの糠と天然塩だけでお願いしました。
この漬け込みの後に水が上がるかどうかが最大の緊張ポイントです。
砂糖などを加えれば浸透圧が高まり水がすぐに上がってくるのですが、今回は塩だけでお願いしました。
前の段階で水分を抜いているので白菜漬けのように塩だけではなかなか水が上がってきません。
三週間、四週間くらいかかるでしょうか。この間に暖かい日が続くとアウトです。全てが水の泡になります。
この冬は気温が低かったおかげで無事にうまくできたのですが、それでもリスクは高かったと思います。

 

ざっとですが、これがいぶりこうこの製造の流れです。

 

赤木さんはもう8年くらい前からいぶりがっこの本場の秋田県横手市に何度も習いに行かれました。
こちらで毎年チャレンジするも、成功までの道のりはとても長かったと思います。
上の説明では省きましたが成功させるためには燻し小屋の形状から火の炊き方、水分の抜き方、漬け込みの重しのかけ方などかなり工夫が必要だったようです。

 

 

それで今年のいぶりこうこ。
一口食べてその美味しさに驚きました。

 

甘すぎず、塩辛すぎず、燻製臭も強すぎない。
かと言って控えめというわけではなく、旨味、甘さ、香りのバランスが良く、余韻も長い。

 

赤木さん、すごい!
思わず口に出してしまいました。

 

蒜山耕藝の加工品のほとんどは自分たちの原料を職人さんに託してつくってもらっています。
両者の関係性の中でこういう感動が生まれ、その結果見える世界が拡がります。

 

特に赤木さんは同じ地区に住む仲間です。
この土地を愛す気持ちには驚かされるほどだし、実際にこの土地が活性化するためにたくさんの仕事を創造しています。
本当に尊敬します。

 

いぶりこうこは12日の20時から他の加工品などと合わせてオンラインショップにて販売開始です。
数に限りがありますので、いぶりこうこ好きの方はぜひチェックしてください!

 

 

 

高谷裕治

 

 

 

 




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