堀仁憲さん、坂野友紀さんを訪ねて <1>

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蒜山から車で約1時間。
岡山県の吉備中央町にある堀仁憲さん、坂野友紀さんの住まいと工房を訪ねました。
細い坂道をのぼっていくと静かに広がる田畑や果樹園の景色。その一角にふたりの住まいがあります。
庭に足を踏み入れると、思わずふうっと深呼吸したくなる、隅々まで気を行き届かせた空間。
堀さんはこの木はあそこからこちらに移植して、目隠しのためにこの植え込みを広くして…と事もなげに説明してくれるけれど、家や庭、畑にここまで丁寧に手を入れていくことで、この空気ができあがっているんだよなぁと感じ入ります。

 

そう、その空気とはスーッと気が整っていて、ふたりのいろいろな積み重ねなんだけれど、決して重くなく、押し付けがない。
むしろふわっと軽く、こちらに寄り添ってくれる、ただただ清らかで穏やかな空気。
ふたりのつくる器やカトラリーとおんなじ、なんです。
今回ふたりの仕事を見せていただいたりお話を伺う中で、その理由を垣間見ることができました。

 

蒜山耕藝の食卓くどでは日常的にお二人の器やカトラリーを使っています。
毎日の食卓で何気なく感じるもの。その理由を知ることは、私にとってとても大切な経験でした。
「今、生きている」ことを実感する、そこに通じる気がするのです。
もしかしたら私以外にも響いてくれる方がたくさんいるんじゃないか、そんな思いでこの大切な記憶を記していきたいと思います。

 

 

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まずはじめに案内してもらったのが堀仁憲さんの工房。
いつも使っている1枚のお皿がどのようにつくられているのか、はじめて見せてもらいました。
全身を使って土を練り、独特の緊張感を漂わせながらろくろを回す。
体力も気力もかなり必要な工程だと思うのですが、みるみる土が混ざっていく様は、川の水が流れるような、風で木の枝が揺れるような、私の目にはとても自然な光景に映りました。

 

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「最近は仕事のはじめに目を閉じてろくろを回して、碗をひとつ作ってるんです。」
堀さんがそっと教えてくれました。棚にならんだ、ひときわ印象深い碗たち。

 

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確かにカタチとしては微妙な差異なのに、ひとつひとつ受ける印象が違います。興味深い。
なんで目を閉じて碗をつくるのか。思わずその理由を尋ねてしまいました。

 

「目でカタチを追っていると、こうしようという意識に集中しすぎてしまって、土を感じにくくなりがちなんです。」

「手で土を感じて、その感覚だけでできたカタチは思ってたのと違うことがまだ多いけど、カタチにとらわれない自由さがあるのと、土の動きがより感じられて楽しいんだ。決められたカタチがないので、そこに想いを込めやすいんだよね。」

 

堀さんの口から出てきた「楽しい」と「自由」、印象深い言葉でした。
「〜しなければならない。」「〜あるべき。」から自由な堀さんの器。
「楽しい」という純粋な動機でつくられていたんだ。

 

深い味のある佇まいの堀さんの器。
どこを見ても、どこを触れても堀さんらしいのだけど、声高ではなくそこに軽やかに在る存在感。
その理由はここにあるのかもしれないと感じました。
こうしたい、こうつくりたいという「我(が)」ではなく、あくまでも堀さんという存在を通して、今、ここに滲み出てくるカタチ。

 

それは私たちが田畑に向き合うときに意識していることと、とても似ていると思いました。

自然の摂理に沿って、自然のリズムで、作物自身の力で育つ(育って欲しいと思っている)米や野菜たち。
すべてを天に委ねているようですがそうではなく、明らかに私たち自身の思いや状態が反映します。
今生まれた堀さんの器に、堀さんらしさが滲みでているように。

 

<2>につづく。

 

 

高谷絵里香

 

 




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