お米のこと。猪のこと。

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今はすっかり秋めいてきましたが、蒜山に来てからこれほど暑いことは無かった夏が終わりました。
いつもはお盆を過ぎると肌寒くなるのですが、今年は8月いっぱい湿度も気温も高い状態が続きました。
お米の登熟は早くなるのですが、畑や畔の草の勢いは止まらず、秋冬野菜の播種や定植の時期の見定めも難しく、今年も大根や白菜はハムシという虫にだいぶ食べられています。
虫や病気の発生は土の状態が大きく影響すると考えています。土作りがまだまだできていないので、より一層種を蒔く時期がとても重要になるように感じています。お盆を過ぎて種まきが1日遅れると収穫が一週間遅れる、と近所のおばあさんに言われるとどうしても焦ってしまうものです。
幸い、畑には余裕があるので数日置きに蒔いていますがどうなることやら。

さて、お米ですが、地域の稲刈りがだいぶ済んでしまいまいした。
蒜山耕藝の田んぼは台風が過ぎてから。もしかしたら今週の後半から始めるかもしれません。
悲しいかな、まだまだ倒れるほどの実りが無いので、亀の尾以外は台風が来ても何事もなかったように立っていることでしょう。

作業的には田植えから1ヶ月間のがむしゃらに作業する時期とは違い、もう草刈りと見守ることしかできない時期です。
稲穂で土が見えなくなるほどの田んぼは収穫が待ち遠しい気持ちになり、その逆の田んぼを見るとつい先行きの不安で奥歯を噛み締めてしまいます。
良いところは増収、調子が出ないところは減収、トータルでどうなるか。
籾摺りするまでわからないし、今後1年間の身の振り方にも関わるのでそれはもうドキドキです。

また、この一週間ほどササニシキの田んぼに猪が毎日入るようになってしまいました。
初めは稲をほとんど食べることはせず、畔を掘り返すだけだったのですが(←畔の中に滞っている何かがあるのでしょう。感謝!)、次第に稲を食べるようになってきてしまいました。
毎日電柵をチェックし、毎日強固なものに改善していったのですがどうしても突破されてしまい、最後の手段で1日がかりでネットを張り、止まったと思ったらまた入られて。収穫のこと、猪のことで毎年この時期はマリッジブルーならぬ稲刈りブルーになってしまいます。

 

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猪のことはこの数年間ずっと考えています。
過去6年間、だいぶ被害を受けましたが日頃から彼らの活動の痕跡を見ていると、憎しみや怒りといった敵対的な感情になることは無くなりました。
彼らは野生の本能を存分に発揮して、その時その時を必死に生きていると思うのですが、人間の頭では考えられない行動原理があるようにしか思えません。
田んぼにおいては、まだ柔らかい稲から食べたほうが効率的だと思うのですが何故か労力を使って畔を掘るばかり。そこにミミズがあるからという説もありますが、きっと畔の中にミミズがたくさんいるわけではありません。掘る労力と得られるエネルギーをミミズで考えるとまったく釣り合いが取れないように思えます。

電柵の刺激に耐え、リスクを冒し、夜行性では無い猪が真っ暗闇の中、発達した嗅覚を頼りに行き着いたのが畔を掘るという行為。
以前からお話ししている大地の再生で学んできたことを踏まえて考えると、間違いなくその環境をプラスに導く行動をしてくれています。

これは少しロマンチックな仮説ですが、彼らは単に刹那的に生きているのでは無く、人間よりもずっと何世代先のことを考えて、もしかしたら種を超えてあらゆる存在のためプラスに導くような行動をしているのかもしれません。それは明確な意思を持っていないかもしれないし、猪だけではなく他の生き物すべてにおいて言えることかもしれません。さらにいうならば、そこに自然の摂理の一端を見ているような気さえしてくるのです。

自分も半信半疑ではありますが、少しでもそう思うと彼らを敵対視することはできません。
だからと言って、ノーガードでいることもできません。籾も結構食べられてしまったので。。。
稲は守らせてもらうけど、彼らの存在の意味をよく考え、自分がするべきこと、やれることをしっかりと理解したい。
答えにはたどり着けなくても、そのプロセスの体験の中でしか見えない世界があるかもしれない。
農業や暮らしや生き方、型をつくってはめこんでいくのではなく、自ずと形づけられていく世界。
ここのような山間部は究極の自然素材にまだ満ち溢れている。
山間部で農業をする意味、楽しみ、醍醐味というのはここにあると思っています。

 

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そして、お米の販売のこともそろそろ告知したいと思います。
予定では10月の中旬からの発送を予定しています。
ササニシキ、亀の尾、ヒメノモチの販売します。
年間契約については継続のお客様を優先とさせて頂いております。お米の保管場所の関係で年間契約の枠が増やすことができないので
空きが出た場合のみのご案内となります。
自由注文についてはササニシキ、亀の尾については5kg単位での販売、もち米については1キロ単位で販売いたします。
10月にヤマト運輸さんの送料が改正となる予定ですが、まだ送料の金額が決まっておりません。
正式に送料が決まり次第、注文の受付を開始したいと思いますので今しばらくお待ちください。

今回送料が上がることが決まっていますが、それに伴い自分たちの営農スタイルも考えなおす時期となりました。
少しずつ野菜の作付けや発送は減らしてきましたが、さらに減らすことになると思います。
米、麦、豆といった穀物の役割をもう一度考え直し、自分たちも歩み方も考えていきたいと思います。

 

 

高谷裕治

 

 

 

 

 

 




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