米を「つくる」
稲と一言でいっても日本では300〜400種類もの品種がつくられているとされています。
それぞれ違う歴史を持っていて個性も違う。
僕が写真の中で持っているのは同じ日に種を蒔いて同じ日に田植えをしたヒメノモチ(左)と農林22号(右)です。
自然栽培二年目の同じ田んぼの中に隣接して植えています。
写真では分かり難いかもしれませんが実際に見るとその差は歴然です。
ヒメノモチはあまり育ちが良くなくて条間の土が見えてしまいますが、農林22号は背も高くて勢いがあり、上からみると条間の土は見えません。
品種の特徴としてヒメノモチは早生といって早く成長するタイプで農林22号はゆっくり成長するタイプです。
品種によってこんなに差がでるなんて正直驚きました。
この田んぼではヒメノモチはほとんど収穫できないほどの育ち方ですが、下の写真のように草にも負けず立派に育っているところもあります。ここは自然栽培3年目の圃場です。
この品種だから良いとか悪いとか短絡的に考えてはいけませんね。
「土と種と人との三位一体」とよく研修中に聞かされていました。
田んぼによって土も違えば、日当り、地形、風あたりなど一つ一つ違う。
種だって品種によってそれぞれまったく違う特性があります。
人間の関わり方だって、耕し方も違えば耕さない方法もある。水管理も草管理も様々です。
単に肥料や農薬を使わないというだけでなく無数にある組み合わせの中から、いま自分に備わっている感覚に従い選ぶこと。自然任せではなく、人が自然の中で究極の自然素材をつかって自らの「いのち」の元となる「いのち」を「つくる」ということ。蒜山耕藝の「藝」の字に込めた想いを思い出しました。
農林22号は今年一番元気に育っていますが、9月10日頃に穂が揃うという蒜山では致命的な遅さになっていましました。
急激に平均気温が下がるこの季節、実が膨らまないまま収穫の時を迎えほとんど収穫できない可能性が高いでしょう。
それでも米づくりに対して考える良い機会になりましたし、何よりも米を「つくる」ということがどんなに奥深くてどんなに楽しいことか。
そう思わずにはいられません。
くどでも少しづつですが壁塗りが進んでいます。
土と砂と藁という自然素材を駆使してつくりあげる壁を見ながらなんとも言えない幸福感に浸っています。
高谷裕治